(川越・時の鐘)
さてさて。
トラキチはいま(この記事の初出当時)東京のすぐそばにある関東の街に暮らしているんにゃけど、周囲をざっと見渡して、一番好きな町といえば「川越」だにゃ。
埼玉県の川越市。
東京の池袋から東武線の電車に乗るか、新宿から西武線に乗るかすれば、ほどなく到着にゃ。JRでも来られるにゃ。池袋の場合、早い電車ならわずか30分そこそこにゃ。
その川越をトラキチが好きな理由4つをいまから語っていくことにするにゃ。
1.江戸のいいところが川越に残っている
川越は旧城下町にゃ。城跡は多くが街になってるけど、本丸御殿の一部がしっかり残ってるにゃ。全国的にもめずらしい事例で、ともすれば天守閣よりも貴重な建物にゃ。
有名な通りがあるにゃ。一番街にゃ。
いわゆる「蔵造りの街」だにゃ。
明治26年の大火で、以前の町並みが灰になったあとに生まれた商店街なんにゃけど、これって江戸のコピーになってるにゃ。
当時、まだ東京に残っていた江戸の繁華街の景観を写しとるかたちで復興させたんよ。東京から職人も呼んで。
なので、広重の浮世絵に出てくるような風景が、ここにはいまもそのまま残されてるにゃ。
黒漆喰の蔵造りが建ち並ぶ、江戸の日本橋みたいな重厚な景観にゃ。
(川越・蔵造りの商家)
お祭りもそうだにゃ。
秋(10月)の川越まつりは、江戸の天下祭り(神田祭・山王祭)の再現にもなっている。
天下祭りでは、壮麗な山車(だし)が何より見ものだったんにゃけど、東京はこれを引き継ぐことができなかったにゃ。
代わりに、川越が引き継いでるにゃ。
そんな川越まつりは、現在、規模も賑やかさも東日本一の山車祭りといっていいにゃろな。
江戸城の古い遺構も川越にあるにゃ。喜多院というお寺に行けばそれが見られるにゃ。家光時代のものにゃ。移築したんだにゃ。
江戸のきれいだったところが、あちこちそっくり切り取られて、川越に残ってるかたちだにゃ。
(川越まつりの山車)
2.県庁所在地になれなかったのが正解?
川越は府中(現在、東京都内)と並んで、古くから武蔵国の中心といえる町だったにゃ。
徳川幕府が将軍のおひざもととして江戸を開いてからも、江戸を除いた「武蔵のみやこ」だったといってもいいだろうにゃ。
なので、埼玉県内で初めて市制が布かれたのは川越にゃ(1922)。県内初の銀行も川越に出来たし(1878)、商工会議所もそうだよにゃ(旧商業会議所・1900)。埼玉で最初に電灯が点いたのも川越にゃ(1904)。
そんな、川越みたいに藩政時代は名だたる城下町だったか、あるいは天領・陣屋町として地域の中心だったところで、その後、県庁所在地になれなかった町が全国にはいくつかあるにゃ。
それって、いい~感じの町が多いんよ。
たとえば、
弘前、会津若松、松本、飛騨高山、高岡、倉敷…
いいにゃろ?
でもって、同じ条件で人口が多いと、今度は経済的覇気に富んだエネルギッシュな町になるよにゃ。
高崎、浜松、姫路、福山…
どうにゃ?
ちなみに、トラキチは、県庁のある町の官公庁舎街なんかにいると、な〜んかタバコ臭と加齢臭が混じったような、疲れた空気をよく感じるんよにゃ。
それが、いま挙げたような町には存在しないんよ。
川越もそのひとつにゃ。
(ちなみに、県庁所在地になっちゃったけど好きな雰囲気の町は、行ったことがある中では盛岡、松山かにゃ?)
(川越・熊野神社)
3.「面」の賑やかさが残る川越の街
川越は、大都市以外ではいまや貴重になった「面の賑やかさ」を残している街にゃ。
これって、地方の若い人にはすでにわかりにくくなってるかもしれないにゃ。
面の賑やかさとは?
トラキチなりの感覚なんにゃけど、たとえば、京都の四条河原町から三条河原町までの線を囲んだ、河原町~錦~祇園界隈のような、広がりと厚みのある賑やかさ。
大阪の茶屋町から曾根崎西側、地面を降って梅田の地下街にかけてのような、街がギュッと引き締まった凝縮感のようなもの。
そんなのを併せて言ってるつもりなんよ。
東京近郊の中くらいの街だと吉祥寺がそうにゃ。モノレールの立体的な視点があるせいか、立川の駅前辺りもまさにそうだよにゃ。
でもって、昔は、人口で20万を超えるような町は、大抵そんな面の賑やかさをもっていたんよ。
にゃけど、いまは日本の都市のほとんどからそれが消えたにゃ。
政令指定都市でさえ、いくつかは危ういぞ。
面ではなく、細い1、2本の「線」だけが、かろうじて賑やかな景色を保っている…
一本裏手に入れば、蝕まれたように空き地がちらほら。一方、郊外の街道沿いを行けば、大型店舗がドカン、ドカン…
特に、車社会化が激しい北海道なんか、札幌以外からは、旭川からも、帯広からも、函館からも、すべてこの「面の賑やかさ」が失われたよにゃ。
札幌さえも近ごろちょっと危ない。
そのことは、いまだしっかりと面が賑やかな福岡の街に比べると、とてもよくわかるにゃ。
(川越・川越氷川神社)
川越は、その点「面」がとても賑やかなんよ。
サツマイモ(川越の名物)のかたちみたいな、太くて長~いかたちの面だにゃ。
なぞると、まず、JR・東武の川越駅前から西武本川越駅前にかけての中心街。
そこをつらぬく全長1km以上の長~い商店街。クレアモールだにゃ。
さらに北上して、大正浪漫夢通り、昭和の街、観光客がいっぱいの一番街・蔵造りの街、そして菓子屋横丁界隈。
それらを挟んで、左右に伸びるいくつもの路地。
そこに、東西の社寺町が寄り添って、街をギュッと締めてる感じだよにゃ。
喜多院、中院、蓮馨寺などなど、古いお寺…
川越氷川神社、川越熊野神社、川越八幡宮なんかの社殿、神域…
いくつも甍を連ねてるにゃ。
こういう環境だと、街がどれだけ賑やかでも浮足立つことがないにゃ。どっしりと落ち着くよにゃ。
(川越・クレアモール)
ちなみに、関東で神社やお寺が多い町といえば、鎌倉があるにゃ。
トラキチは鎌倉マニアでもあるから、実はよく遊びに行く。
にゃけど、その鎌倉にはない、住んでいてちゃんとフルに日常使いができる都市機能にも溢れているのが川越にゃ。
子どもの頃から街っ子で育ったトラキチにとっては、色んなモノサシをあてた上で、かなり完璧な町にゃ。
川越の欠点
唯一、川越で残念なのは、夏暑いことだよにゃ。
実は、知る人ぞ知る話なんにゃけど「川越、日本一暑い町説」っていうのがあって、これ、結構信ぴょう性があるんよ。
印象論でもなく、噂話でもなく、ちゃんとある大学の研究結果に基づいたもので、2017年には日本経済新聞にも載って、その時はちょっとした話題になったにゃ。
ちなみに、埼玉で暑い町といえば、全国的に有名なのが熊谷だよにゃ。
ただし、それって、つまり気象庁の観測地点が熊谷にある(熊谷地方気象台)ことでそういうデータが採れるんであって、川越にはそれが無いんよ。
そこで、上記の大学はその辺を詳しく調べたにゃ。
結果、「たしかに川越の方が熊谷より暑いらしい」ってことで、その理由のひとつは、なんと東京にあるそうにゃ。
ヒートアイランド現象ってあるにゃろ?
東京の巨大なヒートアイランドがつくり出す高温の空気の塊が、上昇しつつ北上し、やがて空からドーンと降りて来るのが川越辺りなんだとか。
にゃんと。
こんなところでも川越と江戸のつながりは深いというわけにゃ。
(川越・中院 鐘楼門)
4.城下町特有の雰囲気に魅せられる
さて、寄り道したけど、トラキチが川越を好きな4番目の理由にゃ。
それは、城下町特有の「あの」雰囲気が、川越にはたしかに存在することにゃ。
ときに、旅好きの人に問いたい。
「小京都」なんていわれるような古い城下町って、どこも、なぜか不思議と夜が暗い感じがしにゃい?
夕方、日が落ちていくのとともに辺りに広がる、歴史の澱が溜まったような闇。
暗い家並みの陰から、じっと何かがこちらを覗いているような気配。
歩いていて、ときどきゾクっとさせられる感覚。
そんな、街のあちらこちらに、別世界につながる穴がぽっかり開いているような雰囲気、やっぱし川越にもあるんよ。
東京にこんなに近くて、こんなに賑やかな町にゃけど、それがちゃんとあるんよ。
トラキチは、そこが好きでたまらないにゃ。
特に、川越城跡に近い町内ほど、この感じって色濃くなってきたりもするよにゃ。
不思議だにゃ~。
ともあれ、以上が、トラキチが川越を好きな4つの理由にゃ。
(川越の街角)
▼その後、トラキチは川越に引っ越したにゃ!