さて、今回は「不動産説教シリーズ」です。
大家さん、大家さんになりたい皆さん、そして、賃貸住宅に暮らしている皆さんも、ぜひ読んでみてください。
今回はこんなお話をします。
「気付いてますか? 不動産管理会社って、実は『利益相反』と『矛盾』を抱えた業態なんです」
利益相反・・・矛盾・・・!
いきなり、穏やかでない言葉を並べてしまいました。
でも、これ、事実なんです。
そして、このことについては、
実際に、賃貸物件(分譲マンションの方ではなく)を管理する不動産管理会社とお付き合いをされている大家さんのうち、多分1~2割ほども、気付かれていないのでは?
僕は、たまにそう思うことがあります。
「一体、どこに利益相反を抱えてるの?」
その最大の答えから、まず言いますね。
賃貸不動産管理業、矛盾の「答え」
答え:
賃貸物件を管理する不動産管理会社は、「管理」と「仲介」を行う
→ 管理業の立場からは、いま住んでいる入居者さんにはなるべく退去してほしくない
→ 仲介業の立場からは、いま住んでいる入居者さんにはどんどん退去してもらいたい
実際に賃貸経営をされている大家さんならば、ここでもう、一発でお気づきですね。
そうなんです。
ほとんどの管理会社は、
1.入居者のいる物件(部屋)ごとに大家さんから毎月管理料をもらう
2.入居者の退去に応じて、新しい入居者を募集し、仲介手数料などをもらう
これらを2本柱に商売をしています。
すると、説明するまでもありません。
1と2は利益が相反するんです。
入居者さんが出ていくともらえなくなる収入 → 1
入居者さんが出ていくことでもらえる可能性が生じる収入 → 2
と、なるわけですから。
これが、賃貸物件を管理する不動産管理会社が、業態上持つ、根本的な矛盾です。
管理と仲介、両方をひとつの会社に一手に任せられることって、大家さんにとっては本当に楽ですよね。
でも、よく考えてみると・・・
その仕組みって、実は大家さんにとっては矛盾を孕んでいるんです。上記のとおり。
(しかも、空室が埋まりやすい人気の物件ならばなおさらに)
で、僕はこのことって、意外に深い影をこの業界に落としているような気がしています。
なにしろ、とにかく苦情が多いでしょ?
管理会社に対しては。
大家さんからも、入居者さんからも。
でも、多くの個々の管理会社さんや、そのスタッフさんを見ると、もちろんみんな真面目に仕事をしてるんです。
入居者管理部門は入居者さんのために。一生懸命に。
オーナーさん(大家さん)サービス部門は大家さんのために。一生懸命に。
それでも、その業態が深いところに抱え込んでいる根源的な矛盾って、いつの間にか、なぜかどこかに、にじみ出てしまうんですね。
たとえその会社自身に悪気がないとしても。
大家さんからはよく、
「いいかげんな業界だ」
「まともな会社に出会ったことがない」
「いい人材が集まらないからだ」
などなど、辛辣な声が聞かれますが、
僕は、賃貸不動産管理業という仕事が、何年たっても垢抜けしないことの理由に、業態そのものがかかえているこの根本的な矛盾が、結構重く影響しているような気がします。
バッサリ言ってしまうと・・・
バッサリ言ってしまうと、
入居者の退去は、大家さんにとっては即ピンチ。空室期間(無収入期間)の発生です。
しかも、次の入居者さんを募集するための出費が始まるファンファーレでもあり、うれしいところがほとんど無いんですが・・・
管理会社にとってはそうではありません。卒なく対応すれば、むしろ、儲けるチャンスです。
空室期間中は、管理会社は管理料収入(おおむね家賃の5~10%くらいです)を失いますが、通常は、それよりも募集・仲介にかかわって入ってくるお金の方が、額は大きくなるからです。
そういう構造です。
ちなみにいまは、物件を自分で管理し、入居者募集だけを不動産会社に任せる、いわゆる自主管理大家さんは少なくなりました。
募集・管理をワンセットで管理会社に任せる大家さんの方が数の上では主流です。とにかく、楽ですからね!
ただし、そういったワンセットになった仕事の中身については、述べたような「矛盾」が、実は含まれているのだということを大家さんはしっかりと認識しておいた方がいいですね。
まだある矛盾とは? 自社物件・サブリース
さらに、管理会社絡みでは、よくこんな矛盾も見られます。
こちらの方が、普段気付いている大家さんは多いでしょう。
その管理会社が、
・自社物件を持っちゃっているケース
あるいは、
・サブリース(転貸・又貸し)物件を持っちゃっているケース
です。
どういうことか?
この場合、大家さんに募集を頼まれた物件なんかよりも、
・自らが大家として入居者から、まるまる家賃をもらえるおいしい物件(自社物件)
または、
・自らが物件の借主でもあるため、たとえ空室期間中であっても、本物の大家さんに家賃を払い続けねばならないキビシい物件(サブリース物件)
これらの契約確保・入居者確保こそが、その会社にとっての優先課題になってしまうんですね。
大家さんにとっては、
「管理会社イコール、パートナーだ。味方だ」
と、思っていたら、実はその正体は思いっきり競争相手なわけです。
つまり、想像できますでしょうか?
非常に良心的でない管理会社であれば、大家さんの物件の募集広告を見て問合せてきた、せっかくのお客さんに対して、
「ほかにこんな物件もあるんですよ。家賃もちょっとお値引きできますよ」
なんて言って、
自分のところの物件をおススメしちゃうことも、理屈としてありえないわけではない・・・と、いうことになります。
企業として、あくまで利益を追求するうえでは!
いかがですか。
大家さんは事業者。大家業は孤独なビジネス。
大家さんは、管理会社にとって「神様・お客様」じゃないんだという今回の結論です。
以上、おそまつです。
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(イラストは「かわいいイラストが無料のイラストレイン」さんより)