アパートの部屋によくある「ロフト」。
今回は、そのロフトにまつわるお話です。
多分、みんなに気づかれていない危険なケースが、まれにですが存在する。
そのことをお伝えしますね。
それは、
「違法ロフト」が生み出すリスクです。
2階に違法ロフトあり。1階には住まない方がいい
結論から。
「2階に違法ロフトがあるなら、1階には住まない方がいい」
です。
とりわけ木造アパートの場合、かなりの深刻さでいえると僕は思っています。
なぜ住まないほうがいいのか?
命に関わるからです。
大地震の際に。
なぜ命に関わるのか?
おそらく1階が潰れる物件が多いはずなんです。ペシャンコに。
2階に違法ロフトが造られている木造物件は、大地震に見舞われた際、たとえ2階は無事でも1階は跡形もなく潰れる。
そんなケースが少なからず発生するんだろうな、と僕は見ています。
理由をこれから話します。
違法ロフトとは?
まず、定義をしておきますね。
ここで僕がいう「違法ロフト」とは、法令で定められた制限をオーバーしたサイズで造られたロフトをいいます。
ロフトには、サイズの制限があるんです。
その基本2つを挙げますね。
まずひとつ目、
・ 高さ1.4メートル以下であること
です。
なお、この高さというのは、ロフト部分のうちもっとも高い箇所を測ってのもの。
なおかつ、内法(うちのり)ですよ。
次、
・ 床面積の1/2未満であること
ロフトの広さは、ロフトのある階の床面積の1/2未満でなければいけません。
賃貸集合住宅だと、専有部分の1/2未満ということになりますね。通常は。
じゃあ、それ以上のサイズのロフトを造っちゃったらどうなるの?
造ってもいいんですよ。
造ろうとしてもいい。
ただし、それはもうロフトではなく「階」とみなされるんです。
つまり、2階建ての住宅の2階に、
サイズオーバーのロフトをこしらえたいのであれば、
その建物は2階建てではなく、あくまで3階建てとして扱われます。
すると当然、その建物は、
木造であれば、木造3階建てに必要な「構造」や「強度」をきちんと備えていなければならないこととなるわけです。(ほかに耐火性能なども)
ところが、そんな状況であるにもかかわらず、
建物はあくまで2階建てであるとして申請され、
建築確認を受け、
建てられてしまっている・・・
それって、もちろん違法建築なんですね。
要は、申請された設計のとおり建てられていないことになるんです。
なので、
・2階建ての賃貸物件
・たしかに部屋は上下2層で並んでいる
・そのうえで2階の上部には大人が立って歩けるくらいのロフトがある
―――そんな場合、ほぼ間違いなくそれは違法建築であり、違法ロフトです。
さらに付け加えると、
その建物が、3階建てとしての構造、強度を正しく備えていることに、
ほぼ期待はできません。
怖いのは重量物を置かれること
さてさて、
そんな違法ロフトなんですが、当のオーナーさんは、実はそのことをよく知っていて、しかも、気にも留めていなかったりします。
「すごいでしょう。実質メゾネットですよ。ウチの物件の2階は。ハッハッハ」
なんてね。
わかります。気持ちは。
もっとも高い部分を1.4メートルに抑えた真面目なロフトと、
1.85メートルまで、ちょいと伸ばしてみたやんちゃなロフト、
「たった45センチの差、何が違うんだよっ」
と、言いたいところですよね。
ところが、実際、違うんです。
何が?
利用のされ方です。
問題は、45センチだの何センチだのという、単にハードを測定しただけの数値ではなく、
むしろソフトの部分にあるんです。
なんとなれば、
中で歩けちゃうくらいの、部屋のようなロフトであれば、入居者は実際にもそこを部屋のように使いますでしょ?
すると当然、そこには重量物がたくさん置かれることになりやすいんです。
たとえば、本来の収納としての使用に加えて、
本棚だの、
タンスだの、
家電だの、
ヘタすりゃベッドも。
それを1、2階それぞれが4~5戸くらいの、大抵は華奢なつくりの木造の2階の部屋のほとんどでやられてご覧なさい。
屋根直下の小屋裏に(ちなみにロフトは公的には「小屋裏物置等」と呼ばれます)、
重いものがギュウギュウに詰まった、
不気味なトップヘビーの建物が、
たちまち一軒出来上がりです。
それです。
僕はまさにそれを見たことがあるので、以来、違法ロフトが怖いんですね。
だって、
「実質メゾネットですよ。ハハハ」のオーナーさん、
いちいち入居者に伝えてくれますでしょうか?
「この部屋のロフト広いけど、重いもの置かないでね」って。
伝えませんよね。多分。
以上、こまかな説明はもういいでしょう。
2階建てとしての構造・強度でしか建てられていない建物の最上部に、想定外の重量物が詰め込まれている。
割り箸で組んだやぐらの上に文鎮でも置いたようなトップヘビーの建物になっている。
僕に子どもがいたら、そんなアパートの1階には絶対に住まわせません。
違法ロフトのある物件の見分け方
さて、では、
そんな違法ロフトが存在する物件って、どう見分けたらいいんでしょう。
その答えは・・・ここまで色々と書いていてなんなんですが、
う~ん、難しい。
当の2階の部屋に入ってみることが出来ないかぎり、見分けるのは難しいんですが、外観から「ほぼ怪しい」と判断できるケースがひとつあります。
それは「窓」です。
ちゃんと外壁に穿たれた、垂直の立派な窓が、違法ロフトにはついていることが多いんですね。
なにしろその内側には、実質的な「部屋」が隠れていますので、それなりの窓がないと使い勝手が悪いんです。
なので、違法ロフトには、往々にして窓らしい窓が付く。
すべてではありませんが。
存在を見分けるためのひとつの大きなポイントです。
ちなみに、ロフトをちゃんと法令に従って造ろうとする場合、普通の部屋にあるようなまともな大きさの窓はつけられません。
ただし、細かなサイズの規定については、各自治体に任されていて、かつ、基準がまちまちです。
参考までに、この話題でよく採り上げられる例がこれです。
(換気目的の開口部の大きさ~0.45㎡以下等々を規定)
よかったらご覧になってみてください。
一方、普通の窓ではなく、
小さな天窓や、
(屋根の傾斜に合わせて空を向いている、いわゆるトップライト)
小型のドーマーウィンドウ
(屋根から飛び出した、小屋根をのせたタイプの窓)
が、建物に見えている場合、
それは、ロフトの規制にちゃんと合わせるために(違法とならないように)、わざわざそうしている可能性の方が高いものといえるでしょう。
あとは、広告ですね。
違法ロフトは、うっかり広告でPRされちゃってることもあるんです。
「ひろびろロフト!」なんて。写真もついていたり。
でも、一般の皆さんはロフトのサイズに規制があるなど、事情を知りませんから、現地に行ってみて、
「あっ、すごい。中で歩ける!」
なんて反応をすることにもなるわけです。
で、そこを契約する本人はまだ安全といえるんですが、
問題はその真下の部屋の住人―――と、いうことになるわけです。
以上、
僕はこのブログでは繰り返し言っているつもりですが、関東や東海や、ほかにもさまざまな人口密集地域で次の巨大地震・大震災が起きた際は、
悲劇がたくさん起こると思います。賃貸住宅で。
ひとり暮らしの賃貸集合住宅へ、大事な娘さん・息子さんを預けている、
または預けようとしている、お父さん、お母さん、
たったひとつの大切な若い命、
「後悔先に立たず」を胸に、彼らの住む場所を選んでやってくださいね。
以上、そんなお願いです。
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(イラストは「かわいいイラストが無料のイラストレイン」さんより)