アパートやマンションを買って、不動産投資に乗り出そうとしている方、これを読んで身震いしてください。
不動産の世界には、惚れ惚れするくらい(?)ドライなプレイヤーがいるという話です。
あるアパートでのことです。
そこには、近所でも有名な問題入居者が住んでいたんです。
いわゆるトラブルメーカーです。
まず、部屋ですが、ゴミ屋敷でした。
さらに音楽を大音量で流したり、たびたび奇声も上げたり。
そのくせ、他人の出す音にはやたらと敏感で、
「下の部屋に人が集まってうるさい」
「隣の部屋の出入りの音もうるさい」
などと難癖。
ついには怒鳴り込んだりといった具合でした。
そんな様子を見聞きしながら、僕は思っていました。
「オーナーさん、さぞや胃の痛い毎日なんだろうな」と。
ところが、ところが。
ある日、ウワサが耳に入りました。
「あのアパートから、問題の人が消えた」って。
オーナーさんのところに行き、僕は尋ねました。
「出て行ってもらったんですか。ついに」
「うん。ご近所から、今後もあの人が住み続けるようなら不安だって言われ始めてたからね」
「やっぱり」
「でもね、追い出したというわけじゃないよ」
「というと?」
「僕の持ってる別の物件に引っ越してもらったの。説得して」
「へえ~。お優しい」
「フフフ」
「でも、大丈夫ですか? そっちの物件でも問題起こしませんか、いまに」
「かもなあ」
「それでもまだお世話をなさる?」
「フフフ」
ベテランオーナーさんは、何やら怪しい笑みを浮かべるだけでした。
その数ヶ月後ですね。
オーナーさんが、問題入居者を引っ越しさせた当の物件を売り払ってしまったことを耳にしたのは。
僕はまたぞろインタビューに行きました。(笑)
「売ったそうですね」
「売った」
何やらやたらと明るい表情です。
「さては、初めからそのつもりで?(不良入居者を引っ越しさせた?)」
「ちがうよ。人聞きの悪い」
そう否定しておきながらも、顔にはちゃんと書いてありましたね。
してやったりと。
そうなのです。
オーナーさんの手元には、もともと売り払ってしまいたい物件があったのです。
ですが、その物件には、空室もあったんですね。
これを埋めて満室状態にした方が、もちろん格段に見栄えがよく売りやすい。
そこで、不良入居者を埋め込んだんです。
しかもタイミングがいいことに、ご近所からの不安の声も、ちょうどピークを迎えてました。
そこでオーナーさんは電光石火の判断をめぐらせ、
・物件が売りやすくなってよし
・不良入居者を手離れさせられてよし
・アパートのご近所さんに安心を与えられてよし
・不良入居者には退去を迫ったわけではないので恨まれずによし
4つの「よし」をまんまと手に入れてしまったというわけです。
で、気になるのはこれですね。
「買い主さん(新しいオーナー)、困ってるんじゃないですか」
「そのようだ」
「やっぱりトラブルを?」
「うん。前より派手にやってるみたい。でも、向こうには管理会社がついてるからね。管理会社がかなり手を焼いてるそうだよ」
「恨み言いわれません?」
「それはない。間に買取業者1社挟まってるから」
「な~るほど」
「買い主は僕から直接買ったわけじゃないからね」
と、いうわけで、
なんともかんとも、惚れ惚れするくらいドライです。
ハイ、そこで教訓です。
中古収益物件を買って、不動産投資に乗り出そうとしている方、
流通しているアパートやマンションの中には、こんな風に商売にきわめてドライなオーナーさんが、爆弾を詰め込んで、ポイ!しているものもありますからね。
ぜひ、気をつけてください。
こんな物件で自主管理に挑もうなどといった場合、ただの投資のつもりがとんだアドベンチャーの幕開けになります。
覚悟してくださいね。
でも、そうなったらそうなったで、それも人生の面白み、チャレンジだという人がいるならば、僕はそちらにも賛成します。
なぜって、そこに暮らしているのは人間ですからね。
笑いもし、怒りもし、病みもし、死んだりもする「人間」なわけです。
生きている人間が詰まったアパートやマンションという箱を買うんですから、不動産投資による賃貸経営というのは、そもそも崇高な覚悟をもって始めるべきものです。
(イラストは「かわいいイラストが無料のイラストレイン」さんより)