イタリア・ポジターノ 天国の夏を過ごす <トラキチ旅のエッセイ>第12話

 

ナポリの南、あの「ポンペイ」を灼熱の灰にうずめた有名なヴェスヴィオ火山の裾を抜けると、ソレント半島が横たわっている。

 

その半島の南岸、断崖を削って進む狭い幹線道路は、ルパン三世がフィアットで疾走しそうな景色。

 

高所恐怖症の人は、車の窓を覗くのは控えたほうがいい。

 

切り立つ崖のはるか眼下、吸い込まれそうなほどに青い地中海の海面を望んでしまうことになるからだ。

 

そんな風景の中、ポジターノの町は突然現れる。

 

パステルの家並み。光を浴びてかがやく木々。入り江に停泊する無数のクルーザー、ヨット。白い飛行機雲。

 

ハリウッド・スターが夏の隠れ家とし、優雅なリゾートファッションがここから発信される。

 

ソレント半島——アマルフィ海岸にいくつも展開するリゾートタウンのなかで、おそらくもっとも多くのドルやユーロが落とされる町が、ここポジターノだろう。

 

なお、細い路地と急な坂道が細かく入り組んだこの町では、車での散策は不可能。ルパンもフィアットをホテルに預ける必要がある。

 

時折風が運ぶ、海とレモンの香り。

 

レナート・フチーニ(詩人)の言う、

 

「アマルフィ(辺り)の人びとにとって、いずれ行く天国は、いまの毎日と変わりのないものだろう」

 

——その言葉が、ここでは激しく現実味を帯びてしまう。

 

(上記は初出2009年。トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)

 

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