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海の上を飛んで大分へ。ホーバークラフトに乗った日のこと <トラキチ旅のエッセイ>第7話

 

「お客さんを乗せて営業運転しているのは、全国でわが社だけですね」――係員はそう言って胸を張った(2007年頃)。

 

全国、どころではない。世界を見渡しても見つけるのはなかなか難しい。

 

場所は、九州、大分。豊後水道に面して三方を海に囲まれる小さな地方空港、大分空港。

 

ここに降り立つ飛行機の乗客は、誰もが不思議な乗り物への案内表示を目にすることになる。

 

ホーバークラフトだ。

 

地を滑り、水上を駆ける、浮かぶ機体。船のようだがあくまで宙を飛んでいる。

 

この珍しい乗り物について、多くの人がその存在を知っていても、実物を見たことはないだろう。ましてや、これに乗る経験などそう得るチャンスのあるものではない。

 

ところが、大分の地では、これが日々営業運行され、大勢の観光客やビジネスパーソンを乗せてピストン輸送しているのである。

 

路線は、大分空港 ―― 大分市中心部。

 

空港から乗ると、市街地にほど近い大分川の河口まで、陽光きらめく別府湾をするどく突っ切り、30分でわれわれを運んでくれる。

 

ホーバークラフトは、その機体の下部から猛烈な勢いで空気を噴出し、地面や水面から離れて浮上する。

 

そのうえで、機体上部のプロペラを回し、進行方向に進む。つまり、空中を飛んでいる。

 

なので、理屈をいえばホーバークラフトは飛行機の一種となりそうだが、法律上は船舶の扱いとのことである。

 

ちなみに、実際に乗ってみると、キャビンと同じフロアに置かれた操縦席には凛々しい横顔のパイロット――、

 

ではなく、少々くたびれた制服をひっかけた「運ちゃん」が、田舎の路線バスよろしく日焼けした顔で座っていたりする。

 

このあたりは、いかにも九州の匂いだ。

 

(上記は初出2009年。内容はその2年くらい前の現地訪問に基づくものにゃ。トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ。ちなみに、大分空港のホーバークラフト路線はその後廃止されたけど、2022年現在、復活計画が進められているにゃ)

 

▼2022年5月「乗りものニュース」の記事にゃ

trafficnews.jp