私は歩き方がお笑い芸人の坂田利夫師匠に似ているといわれる。
なので、大阪の街では注意しなければならない。人違いをされて、偉大な師匠の名を汚してはならない。
大阪。数年前から、この街と縁が深い。
通勤するかのように、毎週訪れた頃もある。
さらに、若い時分は憧れていた。住んでいた地方のローカルTV局が時折深夜に流す大阪の番組にひどく惹かれた。
なんば・十三・天神橋――
新地・本町・天王寺――
行ったことのない場所の名前をいくつも覚えた。
雑踏の交錯する梅田の巨大な地下通路。心斎橋から南側のターミナルへ、水が流れ下るような人の波。
大阪では、いつも感心する。どの方向へ急ぐ人も、その身ごなしがいい。
ここは見知らぬ者同士が雑多に混交する都会という場所。この街の人々は、そこでの生活にまことに多くがこなれている。
インフォメーション・テクノロジー=IT。
この言葉が経済の主題となって以来、ややしばらく、わが大阪には迷いが続いている。
対面と、会話と、それに伴う互いの本質的理解。
人間の温もりを主電源とするかのようなこの街のエコノミクスは、いわゆるITの波には乗り切れていないが、しかし、それは時代に遅れているということではない。
愛を込めて、言わねばならない。
すなわち、ITこそが、産業技術としてまだ大阪の身ごなしに追いついてはいないのだ。
(上記は初出2009年。内容は当時の印象に基づくものにゃ。トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)
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