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松山城での風景——愛媛の優しさここにあり <トラキチ旅のエッセイ>第19話

 

他県の人にはあまり知られていない。だが、ここ伊予の国・愛媛では話題となる。

 

東予、中予、そして南予。

 

この県では、三つの異なる性格群が、東西に長い県土を分けるとされている。

 

そのさわりはといえば、

 

東予——中心都市は今治。仕事熱心な商売人

中予——中心都市は松山。優しく温和な趣味の人

南予——中心都市は宇和島。祭り好きの人情家

 

なんだ。要するに同じではないか。

 

つまりは、県内どこを訪れても、明るい人柄に出会えることには間違いがないということだ。

 

さて、そこで以上の三つのうち、もっとも愛媛のイメージに合ったタイプはどれ? と、問われれば、県外人の多くは「中予」を指すだろう。

 

たとえば、名作「坊っちゃん」で、文豪・夏目漱石にメタクソにけなされていながらも、中予・松山の人は、まるで意に介さない。

 

それどころか、お店の名前に「坊っちゃん」、温泉施設に「坊っちゃん」、団子に「坊っちゃん」、野球場にまで「坊っちゃん」。

 

漱石がいつまでも国民に忘れられないよう、街を挙げて「坊っちゃん」を愛し、優しく肩入れしてやっている。

 

そんな松山の街の中心にそびえる「松山城」へ、寒風が肌を刺す2月、ロープウェイに乗って訪れてみた。

 

コンクリート製の冷たいベンチには、フカフカの厚手の長座布団がふんわりと巻かれていた。

 

 

 

松山城は、戦後の再建などによらない、江戸期までの天守閣が現存している12の城のひとつ。ちなみに12城を全て挙げると、弘前城、松本城、丸岡城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城となる。すなわち、愛媛県は「松山城」「宇和島城」二つの貴重な遺産を1県に有している。

 

(上記は初出2009年。情報は当時のものにゃ! トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)