他県の人にはあまり知られていない。だが、ここ伊予の国・愛媛では話題となる。
東予、中予、そして南予。
この県では、三つの異なる性格群が、東西に長い県土を分けるとされている。
そのさわりはといえば、
東予——中心都市は今治。仕事熱心な商売人
中予——中心都市は松山。優しく温和な趣味の人
南予——中心都市は宇和島。祭り好きの人情家
なんだ。要するに同じではないか。
つまりは、県内どこを訪れても、明るい人柄に出会えることには間違いがないということだ。
さて、そこで以上の三つのうち、もっとも愛媛のイメージに合ったタイプはどれ? と、問われれば、県外人の多くは「中予」を指すだろう。
たとえば、名作「坊っちゃん」で、文豪・夏目漱石にメタクソにけなされていながらも、中予・松山の人は、まるで意に介さない。
それどころか、お店の名前に「坊っちゃん」、温泉施設に「坊っちゃん」、団子に「坊っちゃん」、野球場にまで「坊っちゃん」。
漱石がいつまでも国民に忘れられないよう、街を挙げて「坊っちゃん」を愛し、優しく肩入れしてやっている。
そんな松山の街の中心にそびえる「松山城」へ、寒風が肌を刺す2月、ロープウェイに乗って訪れてみた。
コンクリート製の冷たいベンチには、フカフカの厚手の長座布団がふんわりと巻かれていた。
松山城は、戦後の再建などによらない、江戸期までの天守閣が現存している12の城のひとつ。ちなみに12城を全て挙げると、弘前城、松本城、丸岡城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城となる。すなわち、愛媛県は「松山城」「宇和島城」二つの貴重な遺産を1県に有している。
(上記は初出2009年。情報は当時のものにゃ! トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)