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道草猫の創作物

茨城県庁と水戸城跡。御三家の地のそれぞれの城 <トラキチ旅のエッセイ>第27話

2006年に封切られた映画、東宝「県庁の星」。「エリート」と、自他ともに認める地方公務員が、慣れぬ民間企業でとまどいながらも奮闘するストーリー。そのロケ地のひとつが、茨城県庁舎だった。茨城県水戸市の郊外、関東平野を南に見下ろしながら屹立する。 …

飛鳥の亀石 亀は激動の古代史を見ていたか <トラキチ旅のエッセイ>第26話

奈良県明日香村川原。1匹の亀が路傍に佇んでいる。 「亀石」と、呼ばれている。 長さ約3.6メートル、高さ約1.8メートル。巨石である。 甲羅のようなその大石の下の陰から、三角形のクチバシ(?)が伸びている。 カエルのような目が一対、そこに乗っ…

上州群馬・草津温泉 効き目の秘密を考える <トラキチ旅のエッセイ>第25話

有名な草津温泉の「湯もみ唄」の一節である。 「お医者様でも草津の湯でも惚れた病はなおりゃせぬ」 草津の湯はまことに効能芳しく、万病に効き、恋の病でもない限りはいずれも治癒、快癒させるほどの力がそなわっている旨を唄っている。 江戸時代、物見遊山…

アンコール タ・プローム遺跡 美を完成させたもの <トラキチ旅のエッセイ>第24話

12~13世紀の頃、インドシナ半島は爛熟していたかもしれない。 たとえば、この頃、ビルマではパガン朝が都を埋めんばかりの造寺造仏を繰り返し、とどまる様子がない。エーヤワディーの滔々とした川面を僧の読経が尽きることなく流れている。 ベトナムで…

アンコール プリア・カン遺跡 舞姫たちのいる都城 <トラキチ旅のエッセイ>第23話

クメール=アンコール王朝の最盛期は、ジャヤヴァルマン7世王の時代にもたらされている。 王は、源頼朝と概ね似た頃、この東南アジアの大国の支配者の地位にあった。 頼朝が鎌倉のまちを要塞としてこしらえたように、ジャヤヴァルマン7世もまた、王都アン…

バイヨン・クメールの微笑。あなたは一体だれなのですか <トラキチ旅のエッセイ>第22話

クメール帝国の都城、アンコール・トム。その中心、バイヨン寺院。 低い石の塔が、かさなるように立ち並ぶ。回廊がめぐり、彫刻が壁を埋め尽くす。複雑なその姿は、全体をもって山を表しているとされる。 不思議な遺跡である。塔それぞれに「顔」がある。 微…

カンボジアの巨大湖・トンレサップ 豊穣の水平線 <トラキチ旅のエッセイ>第21話

カンボジアという国の地図を開く。国土の真ん中に大きな水面が見える。 トンレサップ湖だ。 ただし、ここで「湖」をつけてしまうと、実は言葉がかさなる。「トンレ湖・湖」という意味になってしまう。 だが、とりあえずトンレサップ湖——と、ここでは呼んでお…

別所温泉・安楽寺八角三重塔 不思議な形の謎は湯で解く? <トラキチ旅のエッセイ>第20話

信州上田の別所温泉。不思議な場所だ。 そこは山国信濃の山の奥。ここに向かう旅人は、千曲川沿いの街道をはなれ、明るく拓けた野を進む。 野は沃野。「塩田平」という。 だが、初めから沃野だったわけではないだろう。おそらくは無数の農業土木が古代から繰…

松山城での風景——愛媛の優しさここにあり <トラキチ旅のエッセイ>第19話

他県の人にはあまり知られていない。だが、ここ伊予の国・愛媛では話題となる。 東予、中予、そして南予。 この県では、三つの異なる性格群が、東西に長い県土を分けるとされている。 そのさわりはといえば、 東予——中心都市は今治。仕事熱心な商売人 中予——…

矢切の渡し 静かな櫓声が恋の物語を結ぶ <トラキチ旅のエッセイ>第18話

毎年、正月を迎えると、柴又の帝釈天をおとずれる。初詣し、おみくじなども引く。年の吉凶を占う。 が、ここのおみくじは、厳しいのだ。なかなか大吉を引かせてはくれない。 それどころか、筆者には、毎度容赦なく、凶を引かせる。 柴又——といえば、「男はつ…

東京音羽・鳩山会館 薔薇香る邸宅は友情のオブジェ <トラキチ旅のエッセイ>第17話

この建物は、かつて「音羽御殿」と呼ばれた。第52、53、54代内閣総理大臣をつとめた鳩山一郎の旧自宅である。 場所は東京の中心。文京区音羽の丘の上。「音羽」の名は、この建物によって有名になった。多くの東京人がこの建物を見知っている。 また、…

カイロのマクドナルド (美味なるマック・アラビーヤ) <トラキチ旅のエッセイ>第16話

グローバリズムという言葉がある。ある人は、これに眉をひそめる。 「グローバリズムなんてものが進捗すると、ろくなことがない」 そんな人が、グローバリズムを象徴するものとして、時折槍玉に上げるのが、マクドナルド――というファストフード・チェーンで…

カイロのタクシーに乗るための「勇気」 <トラキチ旅のエッセイ>第15話

カイロの中心街・タフリール広場から、イスラム地区のハーン・ハリーリ市場まで。 「5ポンドで乗せてくれ」 「いやだ。10ポンドだ」 「6ポンドでどうだ」 「ガソリンが高くなっているんだ。勘弁してくれ」 「7ポンドだ。いやなら他を探すよ」 「仕方な…

エジプト・カイロ カイロのブロラン号 <トラキチ旅のエッセイ>第14話

ボロボロのポンコツ。廃車だろうな…と思って見ていると、やがて通りの向こうからオーナーが登場。 錆びついたドアをギイと引き開け、ホコリだらけのシートに座るや、高らかに空ぶかし一発。辺りに黒煙を撒き散らせて、けたたましく去ってゆく。 ここカイロの…

イタリア・ソレント 冷えた白ワインとサマータイムの夕暮れ <トラキチ旅のエッセイ>第13話

ちょうど伊豆半島に対する熱海のようなロケーション――。 ソレント半島の北の付け根に位置するソレントは、潮風とレモンの薫るイタリア・カンパニア州の海沿いをめぐる旅人にとって、この上ない場所にある。 まず、ローマからの新幹線が入線するナポリの中央…

イタリア・ポジターノ 天国の夏を過ごす <トラキチ旅のエッセイ>第12話

ナポリの南、あの「ポンペイ」を灼熱の灰にうずめた有名なヴェスヴィオ火山の裾を抜けると、ソレント半島が横たわっている。 その半島の南岸、断崖を削って進む狭い幹線道路は、ルパン三世がフィアットで疾走しそうな景色。 高所恐怖症の人は、車の窓を覗く…

イタリア・アマルフィ 栄光の記憶はまどろみの中に <トラキチ旅のエッセイ>第11話

日本の商船は、日の丸=日章旗をかかげて海をゆく。商船旗――Civil ensign が、日本の場合、国旗と同じであるからだ。 しかし、そうではない国もある。たとえばイタリア。国旗は緑・白・赤、おなじみの三色旗だが、船は少し違う旗を掲げる。 見ると、緑と赤に…

一千石を投げ捨てても ~阿波徳島・阿波踊りにまつわる昔話 <トラキチ旅のエッセイ>第10話

「もう我慢ができぬ」 男はそうつぶやいて立ち上がると、やにわにその顔を藍染の頬被りで隠し、家人や女中らに気付かれぬよう、ひそかに屋敷を抜け出た。 夏。うだるような暑さの夜。 伸びきった庭草が、周囲を蒸し殺さんばかりに青臭いニオイを辺りに放って…

阿波池田、山間に沈む町。次にウダツを上げる日はいつか <トラキチ旅のエッセイ>第9話

阿波池田。夏。 揺れる陽炎の底に沈み込んだような静かな町を歩いた。 古い家並みの中、ふと1枚の表札が目に留まった。 「蔦 文也」とそこにあった。蔦監督である。 「山あいの町の子どもたちに海を見せてやりたい」 そう言って、県立池田高校野球部を甲子…

一碧湖――伊豆の瞳に恋してる <トラキチ旅のエッセイ>第8話

伊豆半島東部の伊東市に「伊豆の瞳」と呼ばれている小さな湖がある。 一碧湖という。 やや日本の地名らしくない。 そこで古今の漢文を探れば、一碧萬頃――という言葉がある。水面が青々として遠くまで広がるさまをいう。 先憂後楽(後楽園の名前の元となった…

海の上を飛んで大分へ。ホーバークラフトに乗った日のこと <トラキチ旅のエッセイ>第7話

「お客さんを乗せて営業運転しているのは、全国でわが社だけですね」――係員はそう言って胸を張った(2007年頃)。 全国、どころではない。世界を見渡しても見つけるのはなかなか難しい。 場所は、九州、大分。豊後水道に面して三方を海に囲まれる小さな地方…

それは万博から始まった? 私見・大阪空間色彩論 <トラキチ旅のエッセイ>第6話

大阪は色彩豊かである。キタもミナミも変わらない。 狭い街路にさまざまな色彩が幕の内弁当のように押し込まれ、密度感にあふれる景色をつくり出している。 色は派手な原色が愛される。赤、青、黄色――。 あからさまな原色をまとった看板やディスプレイが、子…

わが大阪へのオマージュ <トラキチ旅のエッセイ>第5話

私は歩き方がお笑い芸人の坂田利夫師匠に似ているといわれる。 なので、大阪の街では注意しなければならない。人違いをされて、偉大な師匠の名を汚してはならない。 大阪。数年前から、この街と縁が深い。 通勤するかのように、毎週訪れた頃もある。 さらに…

白水阿弥陀堂・みちのくの姫の美しき御堂 <トラキチ旅のエッセイ>第4話

桜がほころび始めた頃。やわらかな日差しの中、いわきの白水阿弥陀堂を訪れた。 やや南に「勿来の関」があったこの辺り。みちのくの南端。古代から中世にかけては、奥州と関東、ふたつの広大な世界が接する境界だった。 そんな土地に暮らす豪族のもとへ、は…

新潟・天空の花園 その優しさの秘密は? <トラキチ旅のエッセイ>第3話

「新潟に面白い建物があるよ」 「ああ、旧税関(明治2)でしょう」 「いや、ちがう」 「県政記念館(明治16)ですか」 「ちがう。古い建物ばかり思い出すんだな。もっと新しい建物だよ。その県政記念館のすぐ近くにある」 ――と、知人に教えられたのが、新…

水の新潟、神々の新潟 <トラキチ旅のエッセイ>第2話

昼間の気温は30度。真夏の新潟市内。 ところが、陽が沈むとともに、街にはすずしい風がそよぎだした。信濃川のせいだろうか。 人口は約80万人。日本海岸随一の都会。この街は、その中心に巨大な天然のクーラーを備えている。 金沢のように典雅な町並みが…

祇園とはなにか。答えはインドにあった <トラキチ旅のエッセイ>第1話

「祇園の街で認められる」 それは昔も今も、成功を表す尺度のひとつである。 祇園で「旦那」と認められ、舞妓、芸妓という生きた芸術作品のパトロンとなる。そのためには、経済力だけではない、人間に品が要る。 知性も欠かせない。 さらには、品や知性だけ…

戦場となったウクライナに捧げる詩 平和への願いを込めるにゃ

下の一文はトラキチが書いた「詩」にゃ。少しエッセイ風のトラキチ・スタイルの詩にゃ。元は2014年のクリミア半島併合(国際的には未承認)のときに考えたものなんにゃけど、少し手直ししてみたにゃ。 タイトルは「一匹の魚になって、北大西洋を東へと泳いで…

夏の怪談シリーズ.5 「人食い踏切」

僕は大学4年生の大崎達矢。 去年の夏に起った恐ろしい出来事について、話したいと思う。 僕と、僕の親友の身に起こった、あの恐ろしい出来事・・・ 「人食い踏切」での出来事だ。 それは夏休みのこと。ジメジメとした暑い晩だった。 ひとりで部屋にいた僕の…

夏の怪談シリーズ.4 「彼を引きずり込んだ海」

私は由佳。 26歳の会社員です。 去年のことです。 ある男の人を好きになりました。 職場の先輩です。弘也さんといいます。 4つ年上の人です。 その弘也さんには、長年付き合っていた彼女がいました。 私はそのことを弘也さんと付き合い始めてから知りまし…