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カイロのタクシーに乗るための「勇気」 <トラキチ旅のエッセイ>第15話

 

カイロの中心街・タフリール広場から、イスラム地区のハーン・ハリーリ市場まで。

 

「5ポンドで乗せてくれ」

「いやだ。10ポンドだ」

 

「6ポンドでどうだ」

「ガソリンが高くなっているんだ。勘弁してくれ」

 

「7ポンドだ。いやなら他を探すよ」

「仕方ない。乗れ!」

 

カイロではタクシーを停めたら、まずこのように運転手と交渉する。

 

メーター式のタクシーもあるにはあるが、数が少なく、街角に立ってどれだけ待っていても目の前にやってくる気配は無い。

 

代わりに、プープー!と、けたたましくクラクションを鳴らしながら、件の「交渉式タクシー」がひきもきらず登場、

 

「乗れ!乗れ!」

 

と、さかんに商売をアピールする。

 

なお、注意しなければならないのは、乗ってから値段交渉しても遅いということ。

 

多くの運転手は、客から行き先を聞くと何も言わずに走り出し、自ら料金の話は切り出さない。そして、目的地に到着するや、大抵は、彼が欲しいだけの金額をふっかけてくる。

 

これに対し、「相場からかけ離れているじゃないか。払えない」と、一悶着繰り広げるのは、乗車以前に値段交渉することの数倍、いや数十倍、骨の折れる仕事だ。

 

しかし、この交渉式、いい面もある。

 

なにしろカイロの中心部はどこもかしこも渋滞だらけ。夕暮れ時など、ときに車が通りにあふれかえり、道路を埋め、歩行者さえ身動きがとれなくなる。

 

そうした状況で、どんなに到着が遅れても、料金はすでに走り出す前から決めてあるのが交渉式だ。

 

よほどの悪徳運転手でないかぎり、彼は、アッラーの御名のもと、契約を違えることはない。

 

これがメーター式の場合、冷酷に値上がりしてゆく表示を見ながら心細い思いを強いられる。われわれが日本の街で、日常経験していることだ。

 

なお、日本在住経験の長い、ある現地の女性ガイドさんによると、

 

「タクシーはメーター式の方が絶対いいです!あなたのような観光客は余計な勇気を出さずに、ホテルタクシーを使いなさい」――とのこと。

 

なお、カイロのタクシーやタイのトゥクトゥクなど、交渉式の交通機関を利用する場合、値段交渉では言った言わないにならないよう、「メモ」を見せ合うことを筆者からはつよくお勧めしたい。

 

(上記は初出2009年。情報は当時のものにゃ! トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)

 

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