グローバリズムという言葉がある。ある人は、これに眉をひそめる。
「グローバリズムなんてものが進捗すると、ろくなことがない」
そんな人が、グローバリズムを象徴するものとして、時折槍玉に上げるのが、マクドナルド――というファストフード・チェーンである。
世界中にあの赤い看板がはびこり、若者や子どもたちを惑わせ、地域の食文化を喪失の危機に追い込んでいる――。
アフリカの人、
アジアの人、
アラブの人、
皆が皆、同じ味に騙され、口をそろえてこれを「美味だ」という世の中など、面白いものか――などと、揶揄される。
ところがだ。一方のマクドナルドの方では、案外地域文化の尊重、地域への密着も考えていて、グローバルな効率性にそれをどう織り込んでいくべきか、それなりの努力は怠っていない。
たとえば、ここカイロの店舗には、
「マック・アラビーヤ」
なるものがあって、人気も上々である。
マック・アラビーヤ。その正体は「すり身肉のピタサンド」。
だが、エジプトは、ほとんどの国民がイスラム教に帰依する国となる。戒律によって、食することが禁じられている豚肉は使われない。
使われるのは、羊肉である。
癖のない羊肉が、ややスパイシーな味付けをほどこされ、野菜とともにピタ(ポケット型のパン)に挟まれている。ちなみに、ビーフのものもあるそうだ。
そこで、さっそくこれを食べてみた。
旨い。ボリュームもよかった。
「ピタ」=pita は、中東地域の伝統食のひとつだ。英語だが、その元はヘブライ語。イタリアのピッツァの語源は、おそらくこれだろう。
なお、エジプトには、小型のピタである「アエーシ」があって、香ばしい中東風ハンバーグ「コフタ」をはさんで、これを食べたりする。
あ、要するに一緒ではないか――。
食べ終わって、やっと気付いた。
(上記は初出2009年。情報は当時のものにゃ! トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)
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