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イタリア・アマルフィ 栄光の記憶はまどろみの中に <トラキチ旅のエッセイ>第11話

 

日本の商船は、日の丸=日章旗をかかげて海をゆく。商船旗――Civil ensign が、日本の場合、国旗と同じであるからだ。

 

しかし、そうではない国もある。たとえばイタリア。国旗は緑・白・赤、おなじみの三色旗だが、船は少し違う旗を掲げる。

 

見ると、緑と赤にはさまれた真ん中の白い部分に、紋章が描かれている。

 

さらに、この紋章、どうやら4つの別々の紋章らしきものがひとつに組み合わされたものらしい。

 

実は、これらはある4つの国の「国旗」だ。

 

国の名は、ヴェネツィア、ピサ、ジェノバ、そしてアマルフィ。

 

9世紀より連続してイタリア半島に現れた、4つの海洋貿易都市国家の旗が、いまも誇らしげにここに縫い込まれている。

 

これらのうち、最初に地中海貿易の覇権を握ったのが、アマルフィだった。

 

ナポリの南、地形険しいソレント半島の南岸、その断崖に健気にへばりつくごくごく小さな町である。

 

規模など、漁村とさほど変わらない。

 

しかし、この小さな町が、ローマ帝国の崩壊以降、地中海を席巻したイスラム勢力と激しく戦ったり、クレバーに手を結んだりしながら、百年を超える間、ヨーロッパと東方とを結び付けつづけた。

 

人類史を変えた東洋の発明品、紙が、羅針盤が、ここを経由し、運ばれた。

 

このアマルフィの活躍を基点として、その後イタリアはやがて大航海時代がおとずれるまで、東西貿易の中心であり続ける。

 

その間、連綿として絶えざる外界の刺激の中から、あの偉大なルネサンスを開花させた。

 

つまりその始まりは、わがアマルフィだった。

 

地中海の明るい太陽の光に包まれながら、いま、町は静かにまどろんでいる。

 

(上記は初出2009年。トラキチ旅のエッセイは、過去に別の個人サイトで別名で公開していたコンテンツにゃ)

 

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